MicrosoftとSpotify、AppleのEU新法“準拠”姿勢を批判「間違った方向に向かっている」

masapoco
投稿日
2024年1月30日 14:32
Appleストアに掲げられたAppleのロゴマーク画像

Appleが欧州連合のデジタル市場法(DMA)に準拠するために策定したApp Storeの新ルールが、この法律の抜け穴を付き、これまで通りApple税の徴収を続けようとしている事に対し、各方面から攻撃を受けている。

EUのデジタル市場法において、Appleやその他の大手ハイテク企業は、いわゆる「ゲートキーパー」企業に指定されており、そこでは、デジタルプラットフォーム内の競争を促進する事を求められている。しかしAppleは、サードパーティストアを提供する道を選択した開発者に対しても、新たな手数料を課すことで、新規則の大部分を回避することに成功しているのだ。

EUの新規則は、実質的にAppleにサイドローディングやサードパーティーストアの開放を迫るものだった。これは、AppleにWindowsの様な自由な世界を形作るようにと促すものだった。Windows 11ユーザーなら、誰でも、Microsoftに手数料を支払うことなくアプリを作成し、販売することができる。

AppleのライバルであるGoogleも、サードパーティストアやサイドローディングは許可しているが、Googleは自社のプラットフォーム上のデフォルトのアプリやサービスを積極的にコントロールしているため、サードパーティのアプリやサービスを簡単に表示できるようにはなっておらず、その存在を知らないユーザーも多い事だろう。EUはすでに、Androidで新しいスマートフォンをセットアップする際に検索エンジンの選択肢を追加するようGoogleに強制したが、SamsungのGalaxy Storeのようなサードパーティーストアの存在を多くのユーザーが認知するにはまだ時間がかかりそうだ。

これに対し、Appleはこれまで全く異なる状況にいた。Appleは、アプリのサイドローディングを一切認めず、サードパーティアプリストアも許可せず、Xbox Game PassやNVIDIA GeForce Nowのようなサービスをブロックしているのだ。この状況がもしも脅かされ、ユーザーがサードパーティのプラットフォームでゲームをプレイする事が出来るようになれば、ユーザーはより有利な条件を選択する事が予想され、Appleは競争に巻き込まれる。Microsoftは、iOSとAndroidで独自のサードパーティアプリとモバイルゲームストアを成長させたいと考えており、そのためにiOSデバイスの解放を欧州委員会に期待してきた。ユーザーの多くもそれを望んでいたことだろう。だが残念なことに、Appleは抜け道を見付けたようだ。

Microsoftのゲーム担当プレジデントであるSarah Bond氏は、新規則を「間違った方向への一歩」と呼び、Appleに対して新規則に関する「フィードバックに耳を傾ける」よう柔らかな表現で諫めた。SpotifyのCEOであるDaniel Ek氏はより直接的な批判の急先鋒であり、Appleの長年の “悪行”を非難する大規模なブログ記事を投稿している

「新しい規約では、もし私たちがApp Storeに残り、独自のアプリ内決済を提供したい場合、私たちは17%の手数料と、1インストールと1年あたり0.50セントのユーロコアテクノロジーフィーを支払うことになります。そして、もし私たちのアプリをApp Storeから削除し、Alternative App Storeのみに存在させることができたとしても、それはまだうまくいかないでしょう。EUのAppleのインストールベースが1億人規模であるため、ダウンロードとアップデートにかかるこの新しい税金は、私たちの顧客獲得コストを急増させ、10倍にする可能性がある。無料または有料アプリのインストールやアップデートのたびに、サービスを利用しなくなったユーザーに対しても支払わなければならないからです」。

Mozilla、Epic Games、その他様々な企業が、Appleのエコシステムに完全に縛られないアプリを作ろうとするデベロッパーに様々な障壁やハードル、隠れた税金を作り出すアップルの新しいルールを攻撃するために並んでいる。例えばAppleは、iOSでストアフロントを作ろうとする者は、”開発者をサポートする “ために100万ユーロの信用枠を保証する必要があると要求している。Windows 11で言えば、SteamやGOG、Epic Gamesのような企業に対して、さまざまな恣意的なルールに従わなければWindows上にストアを開設することはできないと告げるようなものだ。

EUのDMAはまた、AppleがiOS上で代替ブラウザエンジンを許可する必要があると規定している。現在、ブラウザ企業はAppleが用意したWebKitプラットフォームを使わざるを得ない。Appleは、ChromiumのようなサードパーティのブラウザエンジンがiOS上で製品を開発することを、様々な同様の恣意的な障壁によってより困難にしようとしている。「Appleの提案は、Safariに代わる競争力のあるブラウザを他社が提供することを可能な限り困難にすることで、消費者に実行可能な選択肢を与えようとしている。これは、AppleがiOS上での真のブラウザ競争を妨げる障壁を作り出したもう一つの例だ」とMozillaのDamiano Demonte氏は嘆いてる。

Epic GamesのCEOであり、Appleの閉鎖的なエコシステムと長年戦いを続けているTim Sweeney氏も、Appleを非難している。「独占企業が、どの企業がどのような条件で競争できるかを決めることが、独占禁止法規制のどのような理論の下で許されるのでしょうか?Appleは自由市場の競争を馬鹿にしています」。

Sweeney氏は、AppleのApp Storeの変更を「hot garbage(熱いゴミ)」と呼び、「ヨーロッパの新しいデジタル市場法(Digital Markets Act)を阻止しようとするAppleの計画は、悪質なコンプライアンス(法令遵守)の新たな例である」と述べている。

Sweeney 氏はまた、Apple が自社の App Store と競合するストアを選択できるという考えに対して憤慨している。これは、Apple がマルウェアやその他のセキュリティチェックからユーザーを保護するために必要だと主張する、新しい「Notarization(公証)」要件に言及したものだ。Sweeney氏によると、EpicはNotarizationのアイデアを支持しているものの、同社はAppleがこのプロセスを 「競争を弱体化させ、Appleが関与していない取引にApple税を課し続けるために」利用することを拒否している。

Notarizationの要件は、サードパーティのマーケットプレイスを通じてユーザーのiPhoneやiPadに入るアプリをAppleが管理することになる。Appleによれば、代替配布を目的としたすべてのiOSアプリを暗号化し、署名する計画であり、これによりユーザーは、既知の関係者からアプリを入手していると信頼することができる。

代替アプリストアに関連するもう1つの驚くべき要件は、サードパーティのアプリマーケットプレイスをオープンするために、開発者は「Aランク」の金融機関から100万ユーロのスタンドバイ信用状をAppleに提示しなければならないというAppleのルールだ。これはEpicのような大規模デベロッパーならば問題ないだろうが、小規模な開発者には負担が大きい。

Appleの行動は、消費者の選択肢を減らし、価格を上げ、イノベーションを阻害するものと言えるだろう。



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